下地鉄郎さん宅 木造/自由設計/家族6人
建築士の下地鉄郎さん(51)宅は、三角形の敷地に建つ3階建て5LDKの木造住宅。耐震性の高い構造に加えて、外断熱やIoT化、温・湿度センサー付きの換気扇など、さまざまな機能を付加し、利便性を試しながら暮らす。

三角形の敷地に添った形状の住居。ソファの配置の関係からモニターはIHコンロの横に配置。そのため、「レンジフードを省いた。代わりにコンロ前面(ルーバー部)に給気口、背面に換気扇を設けて風の流れを作り油や煙を排出している」。建築士の自邸ならではのチャレンジが随所に見られる
自然と集う温かなLDK
玄関から入ると、版築風の塗り壁に出迎えられる=下写真。版築とは、土を突き固めて層にする昔ながらの技法。それを機能性塗料を用いて現代的に制作。「懇意にしている左官職人にしつらえてもらいました」と下地さん。地から空をグラデーションで表現した版築に、さわやかな白壁、アーチの出入り口が合わさり、南欧風の空間だ。

玄関の正面には版築風の塗り壁。地中から空をグラデーションの層で表現。写真左下は階段下を活用した収納
LDKは木の梁(はり)を見せ、内装にも木を多用。間接照明が温かみを感じさせるカウンターダイニングには、自然と家族が集まる。妻の梨恵さんは「ご飯を食べる時間はみんなバラバラだけど、私とはそれぞれ顔を合わせています」。
大学1年生、高校1年生、中学2年生、小学6年生の4人の食べ盛りの子どもがいて「4日で5キロのご飯を炊く(笑)。だから私はキッチンにいることが多いんです。料理をしながらも、ダイニングやリビングにいる家族と会話できるところが気に入っています」と話す。
コンロ上部に換気扇がないことも、見通しの良さに一役買っている。油煙や臭い対策は、コンロの前に給気口、後ろに換気扇を設けて風の流れを作って排出している。「大量に揚げ物をするときも、不足は感じない」と梨恵さん。

梁をあらわにし、木を多用したLDK。カウンターやキッチン上部の間接照明も温かな雰囲気を醸す。随所の間接照明も相まって優しい雰囲気。和室は鍼灸師の梨恵さんが「施術室としても使いたい」
視線の抜けで広がり
中古で購入した一戸建て平屋に住んでいたが、手狭になり建て替えを決めた。敷地は三角形で約37坪。そこに、4人分の子ども室、和室、書斎、屋上テラスなど希望は盛りだくさん。そのため「大規模木造や中高層木造にも対応できる耐震性の高いSE構法にし、3階建てにした」と下地さん。
角地や階段下のスペースは、収納やトイレ、書斎として活用。1階は19坪、2階は18坪、3階は5坪と各階はコンパクトだが「視線があちこちに抜けるような空間構成にした」ことも奏功し、床面積以上の広がりを感じさせる。
また、和室は鍼灸(しんきゅう)師であり助産師でもある梨恵さんが「いずれはここを施術室にしたい」という希望があり、外から直接出入りできるよう三角形の先端部分に配置した。
「家族は私に『すべてお任せ』と言っていたが、水面下でそれぞれにヒアリングして設計を進めた。おかげで、あまり文句はないみたい」と下地さんは笑顔で話した。

吹き抜け階段が広がりを感じさせる。2階の室内窓は寝室の一角にある書斎とつながる

2階の寝室。三角の形状を生かして、角を書斎(左)とクローゼット(右)にした
ここがポイント/多彩な設備使って検証
自邸ということもあり「亜熱帯地域における、高気密・高断熱・高耐震住宅の自社設計・施工モデルになるよう、構造や設備を選んだ」と(株)クロトンの建築士・下地鉄郎さん。
躯体は木造のSE構法。特徴は、木造の弱点と言われる接合部を特殊な金物で強固に緊結し、耐震性を高めていること。それを断熱材ですっぽりと覆う「外断熱」にし、基礎部にも内部分断熱を施した。工事中にはインスペクション(建物診断)を実施し、断熱・気密性能を追求。「断熱に関してはしっかり計画・施工されていた。一方、気密測定をしたところ、壁の内側で外断熱仕様の気密テープが一部、剥がれていることが判明した。しっかり張り直して計画通りの数値におさめた」。
光熱費は「以前の家(1LDKの木造平屋)に比べて倍以上の容積になったことや、ガス乾燥機を導入したことから金額的には上がった。しかし、冷房や暖房の効きは良くて心地よい」
各換気扇や給気口などにも機能性をプラス。室内外の空気の流れを制御するための気密シャッターやダンパー付きを採用したほか、脱衣室の換気扇は湿度センサー付き、3階の吹き抜け部は温度センサー付き、仏壇のある和室には煙センサー付きを設置。それぞれ許容値を超えると自動で換気をする。「どれも効果を実感している」

IHコンロの前面(ルーバー内)に給気口、後方に換気扇を設けて油や煙、臭いを外へ排出する
また、各階のトイレは足元に換気扇を設置した。「アンモニアを除き、トイレの嫌なニオイの大部分は空気より重く、足元にたまる。実験的に足元に設置してみたが、臭いが気にならなくなった」と下地さん。

2階のトイレは階段下に配置。換気扇は足元に設置した。「臭いは下にたまるから効率が良い。効果を実感している」と下地さん
「キッチンのレンジフードをなくして給気口・換気扇で対処したのも、やってよかった。外出先から玄関ドアや家電などの操作ができるIoT化も重宝している。いろいろ導入してみて顧客に勧められるか、暮らしの中で検証している」と話した。

三角形の敷地に建つ下地邸。前面が駐車場

屋上をテラスとして活用するため、耐久性や排水能力の高い金属防水を施した

一体的なLDK。キッチンとリビングの距離が近く「会話しやすい」
DATA
家族構成:夫婦、子ども4人
敷地面積:123.59㎡(37.38坪)
1階床面積:約63㎡(約19坪)
2階床面積:約60㎡(約18坪)
3階床面積:約17㎡(約5坪)
建ぺい率:52.59%(許容60+10%)
容積率:112.83%(許容200%)
構造:木造SE構法
用途地域:第一種住居地域
設計:(株)クロトン一級建築士事務所
施工:(株)クロトン
塗り版築:玉枝左官業
お問い合わせ
株式会社クロトン
電話 098(877)9610
https://croton.jp
取材/東江菜穂 撮影/比嘉秀明
毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」
第2114号(2026年7月10日発行)より転載