トートーメーを引き継ぎ、実家を建て替えたHさん。昔日のウチナーヤーを求め、赤瓦屋根が載り木組みがあらわになった木造住宅を思い描いた。高気密・高断熱など住宅性能を高めつつ、深い陰に包まれたテラスで自然を感じながら過ごす。
Hさん宅 木造/自由設計

南側から見るHさん宅。赤瓦屋根と支える木の柱、深い軒下空間が印象的だ。青々とした芝生、さまざまな植物が咲き誇る庭を見渡しながら、アプローチに導かれるように玄関へ。Hさんは「室内のどこからでも庭が見通せ、見る角度や陽光や雨などによって表情が変わるのがいい」と話す、庭も設けた
内外一体の広々空間
立派な木の門扉・敷地囲いから姿を覗かせる赤瓦屋根の木造住宅。トートーメーがあった実家を引き継ぎ、建て替えたHさん宅だ。

Hさんの要望の一つ「門扉」は母屋と同じように赤瓦屋根を載せ、木の格子扉にするなどし、新垣工務店の大工が丁寧に造り上げた
東側と南側に四季折々に花や実をつける庭、北側に家庭菜園があり、「野菜・植物の手入れが日課」とHさん。
疲れを癒やすのが、LDKの南東側に隣接するデッキテラスだ。「何かするわけでもなく日陰の空間で椅子に腰かけて、聞こえてくる鳥や虫の鳴き声、雨音などで心を落ち着かせる。天候で変わる庭の景色をぼんやりと眺めながら、くつろいでいます」。
蚊取り線香の煙がゆらめく特等席で風情を味わいながら過ごし、時に友人らと晩酌をしながらかけがえのない一時を楽しんでいる。

リビング・ダイニングの南東側に隣接するデッキテラス。両開きの掃き出し窓を開けると、室内外が一体となり開放的な空間に。一日の大半をHさんはここで過ごす

庭からデッキテラスへ直接行き来できる。目隠しの木板でテラスを囲みつつ、ルーバー状にすることで、通気性を良くしている
暮らしの中心は庭
仕事の関係で県内を転々としていたことに加え、長年コンクリートの家に暮らしていた。そのため、Hさんは「のどかな環境で、青空の下に赤瓦屋根が映える木造住宅。昔ながらの沖縄の住まいに憧れがあった」と話す。
知人を介してつながった建築会社に設計を依頼。Hさんがアプローチを含むラフな平面図を描いて、建築士と打ち合わせを重ねた。
室内は南東側にLDKと仏壇がある畳間、北西側に寝室と水回りが配置されている。木組みがあらわになり、天井高さは約4.4メートル。

高気密・高断熱のため、空調一台でも涼しい室内環境に。ファンを活用すれば、より効果的だ。四方に開口部があるため、「通風だけでも気持ちがいい」とHさん
どこからでも庭に視線が抜け、「ワンルームのように縦横に広がりを感じられる」。住まいは高気密・高断熱化されているため、室温のムラが小さく、さらに寝室まわりの配置やフラットな床・手すりのおかげで、「スムーズに行き来できる。年を重ねても暮らしやすい家になりました」とうれしそうなHさん。

室内はLDKから奥の寝室・水回りまでつながる広々としたワンルームのような空間。棟木や梁(はり)などの木組みがあらわになり、壁は珪藻土を含んだ天然の塗り材・スギなどの木材を使い分け、仕上げた

障子で寝室と廊下は仕切れ、奥の洗面室・浴室、トイレは行き来しやすいようコンパクトにまとめた
寝室でテレビを見て過ごすこともあるが、「寝床に入る前もウッドデッキに腰かけて、庭を見渡す。庭が生活の中心」。せわしなかった生活から一転、身近に自然を感じながら暮らす日常はこれからも続く。

就寝前に寝室のウッドデッキに腰かけて晩酌することも。突き出た軒は影を落とすだけではなく、杉板よろい貼りの外壁を劣化要因の雨水や紫外線から守る

寝室。枕元の壁には琉球石灰岩を貼り付け間接照明がライトアップ。ラグジュアリーな雰囲気を演出している
ここがポイント/性能高め 木建具は造作
「古き良きウチナーヤー」を形にすべく、(株)新垣工務店の建築士・渡久地政哉さんはHさん作の図面を基に、プランを計画した。
赤瓦は重く、屋根勾配をしっかり取らないと雨が流れない。構造面と雨漏り対策をしっかりしつつ、「細切れにされた部屋・低い天井が一般的な木造民家を刷新。開放感・性能を高め、木建具などを造り込み木造の雰囲気を崩さないよう、まとめました」と渡久地さん。
木の梁など主要構造材は厳しい数値検査をクリアした杉材を採用し、金物で接合。その上に屋根の構造を載せ、小屋組みをあらわにし、縦方向の抜け感を演出した。
床はフラットとし、つり戸などを取り付けたことで移動しやすく。さらに寝室や水回りを北西側にまとめ、「動線が短く、年齢を重ねても足腰への負担は小さい。全ての建具は自社大工が製作し、格子状の戸や障子と意匠面でもバリエーションを持たせています」。

引き継いだトートーメーがある小上がりの畳間。床下の収納棚や仏間・床の間の建具などは造作した
近年の家造りで欠かせないのが「省エネ性」。同社は外張り断熱で住宅をすっぽり覆い、隙間がないか散水試験・気密測定を行う。「高断熱と高気密は必ずセット。目視と数値で性能を確かめています」。

正面の壁は一枚の大壁に見えるよう貼り方を工夫し、左側の壁はノミで凹凸をつけたかのような材で仕上げた
DATA
敷地面積:443.95㎡(約134.53坪)
1階床面積:93.43㎡(約28.31坪)
建ぺい率:28.5%(許容60%)
容積率:21.05%(許容200%)
用途地域:未指定地域
躯体構造:木造・在来軸組工法
設計・施工:(株)新垣工務店 建築設計室
建具:(株)新垣工務店 家具建具製作室
構造:(株)SANSYU
電気:(合)アキラ電気
水道:(有)正設備興行
お問い合わせ
株式会社新垣工務店
電話 098(945)5747
https://www.arakaki-koumuten.com
取材/市森知 撮影/高野光(フォトアートたかの)
毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」お住まい拝見
第2109号(2026年6月5日発行)より転載