沖縄県内で最大規模の管理戸数を抱える中部興産のグループ会社・興産アメニティでは65歳からの部屋探しをサポートする「R65不動産沖縄」事業を行っている。同事業を担当する久田尚志さんが県内の現状や課題について執筆する。(文/久田尚志 興産アメニティ株式会社「R65不動産沖縄」担当)
八方塞がりになる前に
当連載は「亡くなるまで住み続けられる賃貸契約」の話です。これは、借りる人のメリットに聞こえますか? それとも、貸す人のメリットに聞こえるでしょうか?
実は、その両方なのです。
ある賃貸オーナー(貸主)の話です。長く住んでこられた高齢の入居者が部屋で亡くなり、大がかりな清掃が必要になりました。連絡のついた親族は、相続放棄を希望されました。それでもオーナーは「法律に沿って進めれば、整理できるはず」と考えていたそうです。
ところが、相続人がいない場合の整理は思ったほど単純ではありませんでした。賃貸借契約をきちんと終わらせるにも、部屋の中の家財を片付けるにも、「誰の責任で進めるのか」がはっきりしないまま時間だけが過ぎていきます。
家庭裁判所に手続きをお願いする方法もあります。そのときには先払いで数十万円から場合によっては100万円を超えるお金(予納金)を裁判所に預けるよう求められます。亡くなった方に十分な財産が残っていなければ、そのお金が戻ってくる保証もありません。家賃収入が止まったまま、部屋の片付けにも費用が掛かり、さらに大きな金額を準備しなければ手続きすら前に進まない─。
これは珍しい話ではありません。高齢者の受け入れにしっかり向き合ってきたオーナーほど、最後の場面で身動きが取れなくなる、そんな話を現場で耳にします。
賃貸借契約を終える契約
前々回の当連載で紹介した「終身建物賃貸借契約」は、こうした悩みに応える仕組みです。入居者がお亡くなりになった時点で、賃貸借契約そのものが終わります。相続人を探して契約を解除してもらう必要がなく、オーナー側の手続きがずいぶん軽くなります。
入居者にとっても「最期まで住み続けられる」という安心があり、更新時に追い出されないだろうかという不安から解放されます。
双方にメリットがある仕組みですが、オーナーにとっては負担もあります。手すりや段差解消などの設備を整える費用、県の認可手続きの負担もあります。そのため、県内では十分に周知されていないのが現状だと思います。
それでも、長く同じ方に住んでいただける関係を大事にしたいオーナーにとっては、検討する価値のある仕組みのはずです。
整理は残置物処理の契約で
ただし、終身建物賃貸借が整えてくれるのは、あくまで契約を終わらせるだけです。部屋に残されたご家財をどう片付けるのか、誰の手で運び出すのかの問題には別の仕組みが必要になります。
そこで力を発揮するのが、前回紹介した「残置物処理の契約」です。「もしものときは、こうしてほしい」ということを入居者と契約しておくことで、居住支援法人が部屋の片付けを進められます。これは、高齢者に限った話ではないので、リスクを減らすためにもオーナーは備えておくべきです。
賃貸契約は終身建物賃貸借で、部屋の整理は残置物処理の契約で。両方が組み合わさって初めて出口が整います。
次回は、こうした契約の備えに加えて、いざというときの費用面を支えてくれる「少額短期保険」について取り上げます。

執筆者プロフィル

くだなおし・興産アメニティ「R65不動産沖縄」担当。
問い合わせ
電話 098(882)1717
https://r65.kosanamenity.com/
毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」住まいでつながる未来の安心 共助で支える、高齢社会の賃貸経営(9)
第2107号(2026年5月22日発行)より転載