孤独死の残置物、誰がどう片付ける|住まいでつながる未来の安心 共助で支える、高齢社会の賃貸経営

沖縄県内で最大規模の管理戸数を抱える中部興産のグループ会社・興産アメニティでは65歳からの部屋探しをサポートする「R65不動産沖縄」事業を行っている。同事業を担当する久田尚志さんが県内の現状や課題について執筆する。(文/久田尚志 興産アメニティ株式会社「R65不動産沖縄」担当)

空き部屋なのに住めない

入居倍率が100倍を超える沖縄の県営住宅に、空き家が1758戸。2024年度末時点で、全体の1割超です(沖縄タイムス、2026年2月27日付)。100人が順番を待っているのに、部屋は空いたまま、次の人へつながっていません。

その理由の一つは「部屋に荷物が残っているから」です。孤独死した入居者の残置物は、所有権が絡むため行政も処理できない。家族と連絡がつかず、荷物だけが部屋に残り続ける。大きな権限を持つ行政でさえ個人の荷物には手が出せません。ましてや民間のオーナーや管理会社には、手の施しようがない問題です。


一人暮らしのAさん(78)が、賃貸アパートで亡くなりました。唯一の相続人は、県外在住のめい・Bさん(52)。長年疎遠でしたが連絡を受け、仕事を休んで沖縄のAさんの部屋へ。衣類・食器・アルバム・通帳らしきもの…。何が大切で、何を捨てていいかBさんには判断できません。そんな中でも賃料は毎月発生し続けます。解約には相続の手続きが必要で、弁護士を探し書類をそろえ、気づけば半年が過ぎていました。

Bさんが相続放棄をすれば、Bさんへの費用請求はできなくなります。そうすると残置物の処理費用も、空室が続く間の損失も、最終的にはオーナーが丸ごと負うことになります。焦ったオーナーが荷物を処分すれば、別の親族に「形見の品があったはずだ」と訴えられるリスクもあります。

Aさんが亡くなったことは、誰のせいでもない。それでも、残された人たちにはそれぞれの重荷がのしかかります。

生前に「残置物処理」契約

「自分が亡くなった後、こうしてほしい」という意志は、生前に取り決めて置くことができます。「死後事務委任契約」や「残置物処理の準委任契約」と呼ばれるものですが、この契約をしていれば、状況は変わります。部屋の荷物などは、居住支援法人がAさんの意思に基づき対応するためBさんは遠方から何度も通わずに済みます。

もう一つ、重要な点。BさんがAさんの荷物を処分してしまうと、「財産の処分」とみなされ、相続放棄の権利を失うことがあります。もしAさんに借金があった場合、Bさんはその借金を背負うことになります。しかし、第三者が契約に基づき執行するなら、Bさんはその不安もありません。

オーナーにとっても、契約解除と処分の権限が契約上、明確なため早期の対応が可能です。

この契約を「追い出しのための冷たいルール」と感じる方もいるかもしれません。しかし、本人の「迷惑をかけたくない」という切実な願いをかなえ、相続人を突然の負担から守り、オーナーの法的・経済的リスクを和らげます。関係者全員の「防波堤」になるのです。

この業務は現在、居住支援法人が担う役割として法的に位置づけられています。私たち興産アメニティは現在、残置物の処理や死後事務委任の窓口になるための変更申請を進めており、「いざというとき、頼れる先」になるため準備しています。「誰が、どう片付けるか」を生前に決めておくこと。それが、住まいを次の人へとつなぐのです。

執筆者プロフィル

くだなおし・興産アメニティ「R65不動産沖縄」担当。

問い合わせ

電話 098(882)1717 
https://r65.kosanamenity.com/


毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」住まいでつながる未来の安心 共助で支える、高齢社会の賃貸経営(8)
第2103号(2026年4月24日発行)より転載