地域環境に応える建築つくる|亜熱帯の建築「詞」

本土とは異なる気候に属する沖縄建築は、これからどう変化するのだろうか。県内建築家の建築観やアマハジなど独自の沖縄建築の詞(ことば)が蓄積されてきたが、本連載は日本建築家協会沖縄支部の会員らがそれぞれの観点から、「亜熱帯の建築『詞』」について考える。初回は金城優支部長が同支部の取り組みや環境にやさしい建物について解説する。(文・図/金城優  日本建築家協会沖縄支部支部長、有限会社門代表)


2026年度、日本建築家協会(JIA)沖縄支部は設立30周年という節目を迎えます。戦後の復興期から受け継がれてきた「地域の環境に応える建築をつくる」という精神は沖縄の建築文化を支えてきた大切な基盤であり、本年度はその蓄積を未来へ継承する重要な一年となります。

「気候変動の深刻化」や「省エネ基準の義務化」など、建築を取り巻く環境が大きく変化する中、亜熱帯の気候に適した住まいづくりや環境負荷の低減は、これまで以上に求められています。こうした状況を踏まえ、支部では環境への配慮を深める取り組みや、台風・豪雨など自然災害への備えを地域とともに高める活動、そして他分野とのつながりを広げる試みを進めながら、沖縄の未来にふさわしい建築文化を育てていくことを目標としています。

建物のライフサイクル

本年度は、「2050年カーボンニュートラル」をテーマとした連続セミナーを開催し、建物の一生を通じて環境負荷を考える「WLCA(建築ライフサイクルCO2)」=下図=や、沖縄の気候に合わせた「気候風土適応住宅」の知見を広く共有していきます。建築と環境の関係を分かりやすく伝えることを大切にし、一般の方々にも参加しやすい内容として展開予定です。

WLCAについての概略図

従来の建築分野ではカーボンニュートラルについて、建築使用段階に発生する二酸化炭素「オペレーショナルカーボン」を軸に考えていたが、資材製造・建築建設から解体までに発生する二酸化炭素の総量「エンボディドカーボン」に注目が集まっている

先述のWLCAは建築物の運用時の省エネだけではなく、製造・建設・運用・廃棄・リサイクルまでのライフサイクル全体を通じて、二酸化炭素の削減に向けた取り組みのことです。建築物関係は世界の二酸化炭素排出量の37%を占めていますが、花ブロックや緩衝領域を持つ空間構成や、通風経路の確保など、沖縄で発達してきた建築技術や資材を多用することで、住み手にも環境にも応える建築物につながると考えています。

建築分野における二酸化炭素排出量の考え方

左円グラフはこれまでの二酸化炭素排出量の考え方。オペレーショナルカーボンに比重を置き排出量を抑えようとしてきたが、右円グラフのように、資材製造から建設・新築後10年までの建築物のトータル二酸化炭素排出量はエンボディドカーボンの割合が高い

地域とともに歩む

沖縄は島しょ地域であり、日本の「先端=エッジ」に位置してます。その独特の気候や文化は、建築家に鋭い感性と新しい発想をもたらしてきました。支部会員はこの環境で育まれた感性を生かし、地域の未来にふさわしい建築の姿を探求しています。

また、建築家、学生、地域の方々が気軽に語り合える「JIA沖縄トーキング・カフェ」や若手育成の一つとして「卒業設計作品選奨」など多岐にわたり活動。建築や活動内容に関する最新情報をタイムリーに届けています。

支部はこれまでの歩みを礎に、沖縄の未来を見据えた建築文化を地域の皆さまとともに育てていきたいと願っています。支部の活動にも気軽に触れ、建築を楽しむ仲間の輪に加わっていただければ幸いです。

執筆者プロフィル

きんじょう・まさる/1966年南風原町生まれ。Mフクサスローマ事務所を経て、95年に門建築都市研究室を設立。2005年(有)門に改称し、現在に至る。25年6月からJIA沖縄支部支部長として活躍する。
【問い合わせ】(有)門、電話098(870)0303


毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」亜熱帯の建築「詞」(1)
第2114号(2026年7月10日発行)より転載