一級建築士の村山創さんが建築の専門知識と人生哲学を交えて、より「人生を楽しむ」ことにスポットを当てて「住宅論」をつづる。今回は住まい選びについて。「こんな家に住みたい」という、ときめきも大事だが、冷静に数字を考えることも大切だと説明する。(文/村山創 一級建築士)
ときめきと冷静さが大事
住まい選びは、少し恋に似ていると思います。明るいリビング、料理が楽しくなりそうなキッチン。「こんな家で暮らしたい」と未来を思い描いて、胸がときめく。一目ぼれのような出合いがあります。この「ときめき」は、とても大切。住まいへの満足感は、理屈だけでなく、この感情から生まれるからです。
でも、気持ちだけで決めてしまうと、後から家計に無理が出ることがあります。
住まいは一生で一番大きな買い物。ローンの支払いは、思っているよりも長く続きます。しかも固定資産税、火災保険、修繕費、毎月の光熱費。さらに、車の買い替えや、子どもの教育費も必要になります。とくに金利が読みにくい今、気持ちと冷静さの両方が必要です。

ライフプラン表を作成
そこで大切なのが、感情を支えるための「数字」です。毎月の返済額だけではありません。35年先までの、お金の出入りを書き出した「ライフプラン表」を作ってみましょう。これを作ると、いくらまでなら無理なく返せるのか。出費が増える時期でも、家計に余裕は残るのか。家にかかるお金以外に、どのくらいお金を残しておけばいいのか。
この表に子どもの進学も、車の買い替えも、あらかじめ織り込んでおきます。すると、ぼんやりした不安が、「これなら大丈夫」という安心感に変わっていきます。ライフプラン表は、あなたの未来地図になります。

光熱費や修繕費も念頭に
もう一つ、できればやってほしいことがあります。それは、光熱費や修繕費まで含めた「一生分の住まいの費用」で比べることです。
買うときの値段が少し高くても、性能が良くて光熱費を抑えられる家があります。安くても性能が低く、毎月の電気代や将来の修理代がかさむ家もあります。家の値段だけを見ても、本当にお得かどうかは分かりません。
住まいは、買った瞬間がゴールではないのです。なんだか、結婚にも似ていますね。心がときめくことは何より大切です。でも、長く幸せに暮らしていくには、お互いの価値観やこれからの暮らしの見通しも欠かせません。気持ちだけでは不安定になり、計算だけではさみしい。両方がそろってこそ、幸せな暮らしにつながります。
ワクワクする気持ちを大切にしながら、ライフプランという冷静さで家計を守る。心で恋をして、理性で守る。そのバランスが、長く続く幸せにつながっていくのだと思います。
執筆者プロフィル

むらやま・はじめ/一級建築士、創環境Design代表。フラット35適合証明技術者。設計の仕事をしながら、住宅関係の講演会や一般消費者に向けて住宅づくりの情報をSNSで発信する
【創環境Designのホームページ】https://hajimemurayama.my.canva.site/
毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」人生を楽しむ住まい(4)
第2114号(2026年7月10日発行)より転載