【特集・9月23日は不動産の日】マンションの大規模修繕 専門家と当事者が語る、“三つの壁”とは

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9月23の「不動産の日」に合わせ、「不動産」をテーマに特集する。巻頭では、マンションの資産価値に直結する「大規模修繕」の課題と対策を、本紙でマンション大規模修繕についての連載を執筆している赤嶺雄一郎さんと、区分所有するマンションの大規模修繕をした経験を連載中の下地鉄郎さんが語り合った。(編集部/東江菜穂)

赤嶺雄一郎さん
(株)タイズリフォーム 代表取締役
あかみね・ゆういちろう/(株)タイズリフォーム代表。1級建築士、マンション維持修繕技術者、既存住宅状況調査技術者、宅地建物取引士。本紙で2026年4月から「なるほど! 大規模修繕の一歩」を連載中。
(株)タイズリフォーム/電話 098(975)7815

下地鉄郎さん
(株)クロトン 代表取締役

しもじ・てつろう/(株)クロトン代表取締役、既存住宅状況調査技術者、1級建築士、1級防水技能士。本紙で2023年から「インスペクションで解明住まいのミステリー」を連載。5月から番外編として大規模修繕の経験を綴っている。
(株)クロトン/電話 098(877)9610

壁の正体は、お金・住民・業界

お金の問題と対策/修繕積立金は「投資」 資産価値大きく左右

赤嶺 多くのマンション管理組合が、共用部の大規模修繕をするときに「費用が足りない」という問題に直面します。私の肌感覚ですが、県内で十分な費用が貯まっているマンションは少ないと思います。理由は、昨今の工事費の高騰だったり、分譲時に売りやすくするため住民から月々徴収する修繕積立金を安く設定していたり。あと、長期修繕計画を作成しておらず、いつ、どんな工事をするか、それにはいくら掛かるのかという見通しすら立ってないケースも多いです。

下地 長期修繕計画の重要性がまだまだ浸透していないと思います。驚くことに、県内では半数近く(47.6%)のマンションで「長期修繕計画を作成していない」という調査結果が出ています(2024年度県マンション実態調査)。大規模修繕の「土台」となるのが長期修繕計画。これがないと、主役である住民が納得できる修繕は進められません!

私は3年前、区分所有している築35年のマンションの大規模修繕に、修繕委員として携わりました。まず最初にしたのが長期修繕計画の見直しです。必要な工事を整理して工事費を概算したところ、やはり不足していました。そのため、住民承認を得て積立金を増額。そして、取り急ぎ不足している分は沖縄振興開発金融公庫の「マンション共用部分リフォーム融資」を利用しました。この融資は全期間、固定金利で返済期間は基本10年ですが、工事の内容によっては20年に延長することができる。うちの組合では、対象工事(一部の玄関ドア取替工事)を付加して20年融資の条件をクリア。月々の増額幅を抑えることができました。

赤嶺 私がコンサルで入っている多くのマンションでも、公庫の融資を利用しています。一戸建てと違って、マンションは担保力や支払い能力(住民全体としての回収力)があるので、審査に通りやすい。融資を組み込むことで、修繕積立金の「大幅値上げ感」を和らげることができます。

下地 「増額」や「借り入れ」という言葉に拒否反応を示す方もいると思いますが、「修繕をすることで、どう資産価値が向上するか」をイメージすると、印象はだいぶ変わる。修繕積立金を「出ていくお金」ではなく「将来のための投資」と捉えてほしいです。適切な大規模修繕で資産価値を維持・向上させれば安心して住み続けられ、結果的に高値での売却も視野に入れることができます。

赤嶺 そうですよね。マンションを購入する時から、その意識を持ってほしい。購入時に自分の部屋(専有部分)の価格や状態はチェックするのに、マンション全体のことは、築年数くらいしか把握していない方は多いように思います。これまでの修繕履歴や、修繕積立金の貯蓄総額、長期修繕計画が作成・更新されているかどうかも、資産価値を左右するとても重要なポイントです。

上表は(株)クロトン提供

住民の問題と対策/議案はシンプルに 根拠示し理解得る

赤嶺 一戸建てや賃貸アパートなら、基本的に一人のオーナーの了解を得れば工事を進めることができます。しかし、マンションはたくさんのオーナー(区分所有者)がいて、それぞれの考え方があります。住民の合意形成に苦労している管理組合は少なくないでしょう。

下地 私が修繕委員をしたときに感じたのは、総会当日で一気に話し合おうとすると、いくら時間があっても足りないということ。私たちの場合は、理事長と修繕委員で月1で集まって事前に方針を固めておき、総会ではそれをもとに住民の決議を得るという流れで進めました。住民抜きで進めるというわけではなく、経過を掲示板などでお知らせしながら、いざ決議をする段階での摩擦を抑えるよう配慮しました。

金銭面が絡むことは根拠を明示しながら説明しました。その根拠となるのが、長期修繕計画。計画書をもとにしっかりとした数字やスケジュールで示すことが、住民の理解を得るための強力な後ろ盾となります。

赤嶺 前職ではマンション管理会社にいて、管理組合の総会にも参加していました。その際にやっていたのが「議題の切り分け」です。例えば「大規模修繕について」という議案にすると、住民から「本当にこの工事が必要なのか」「金額が高い」などさまざまな意見が噴出し、論点が散ってしまいます。まずは「大規模修繕工事の実施について(やるか・やらないか)」に絞る。金額や依頼会社などの細かい話は抜いて「このタイミングで大規模修繕工事を行うか」のみの議案にして、住民の意向を問います。「工事をする」という合意が取れてから次の議案「施工会社や金額、実施時期」の決議に移る。ステップを分けると、議論のレールも整えやすくなります。

ただ、どんなに誠意を尽くしても、すべての住民に100%納得してもらうのは不可能に近い。住民の〝最大公約数〟を拾って、理事長らが決議に向けて引っ張っていくのが現実的なアプローチだと思います。

合意形成が困難な理由

上表は(株)タイズリフォーム提供

業界の問題と対策/管理組合が学び、質問を

赤嶺 マンションの大規模修繕を巡っては、管理会社や施工会社が深く関わる談合事件が社会問題になっています。管理組合をサポートするはずの設計事務所や設計コンサル会社が特定の施工会社に工事を融通し、バックマージンをもらってるケースもいまだに散見されるようです。

大規模修繕は専門的な内容が多いですが、こうした問題に巻き込まれないためには、まず管理組合が修繕や組合運営について「学ぶ」こと。疑問があれば都度、明確な根拠を伴う説明を受ける。判断が難しければ利害関係のないコンサルなどの力を借りる。住民一人一人が話し合いに参加し、説明を聞き、不明な点は質問する。そして納得できる根拠を持って工事を発注する。それが自分たちの住まいと資産を守ることにつながります。

下地 私が区分所有するマンションでは、大規模修繕をきっかけに管理会社の変更に至りました。特に、見積もりのプロセスが不透明だったことに住民から不信感が生じました。管理会社の変更と大規模修繕というハードルを管理組合が主体となって乗り越えたことで、住民のマンションへの愛着も増しました。

しかし、手順や会社選定を誤ると負担が増大したり、自主管理になるリスクもある。大切なパートナーである管理会社との信頼関係をよくするためにも、日ごろから大規模修繕のプロセスを住民全員が共有し、必要であれば管理契約や管理規約の変更なども行う気持ちでいることが大切だと思います。

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毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」特集・9/23 不動産の日 マンション大規模修繕 三つの壁
第2124号(2026年9月18日発行)より転載