介護人材が不足する中、現場の負担を減らし、利用者のサービス向上につなげる取り組みとして国が推進するのが、ロボットやAIなど「介護テクノロジー」を使った生産性の向上だ。相談窓口の一つ「介護業務・テクノロジー伴走支援センターおきなわ」(かいテク沖縄)は2025年、沖縄県の委託事業「業務改善研修&伴走支援プログラム」を実施。宮古島市から参加した「シルバーケア悠悠」は同プログラムでシート型見守りセンサーを導入、現場の負担軽減や看取(みと)りに活用中だ。
介護現場の課題解決① かいテク沖縄「業務改善研修&伴奏支援プログラム」
宮古島市・介護老人保健施設「シルバーケア悠悠」の事例から
病院を退院した要介護1〜5の利用者を受け入れる「シルバーケア悠悠」。在宅復帰目指してリハビリを行うほか、食事や排泄介助、体位変更など利用者の状態に応じた介護ケアを行う老人保健施設だ。「定員は80人で、職員の半数以上が60歳以上で人材不足は沖縄本島以上に深刻。状況を改善するためにも新しいことに着手しなくてはとプログラムに参加した」と事務長の笠原智江美さん。プロジェクトチームを立ち上げ、半年間で4度の研修に参加。専門家のサポートを受けながら現場の課題を見える化し、改善計画を作り、実行・検証した。
訪室回数減り睡眠の質向上にも
課題の中でも、特に負担が大きかったのが夜勤帯。職員がいるサービスステーションから利用者の居室までは距離がある上、状況を確認するため2時間置きに訪室していた。ベッドには利用者が動くと鳴る足元センサーがあるが、「夜間に同時に鳴ると、どこを優先するか瞬時の判断が求められる。身体的・精神的ストレスから退職する職員が多かった」と振り返る。
着目したのが、シート型の見守りセンサー「眠りSCAN」だ。利用者の心拍数や呼吸、睡眠状態がリアルタイムで分かるだけでなく、起き上がったりベッドから離れるとステーションのモニターに通知が届く。費用の半分は補助を受け、16床分を導入した。

サービスステーションに設置したモニター画面。「睡眠」「覚醒」「起き上がり」「離床」など利用者の状態が、色や人型のアイコンで分かる

「眠りSCAN」の体動センサー。寝返りなどの大きな動きから、胸部の微細な呼吸や心拍に伴う振動まで察知。利用者の状態をリアルタイムでモニタリングできる
事務長補佐の新里貞子さんは「以前は寝ている利用者を起こさないようライトを当てながら胸の動きを見たり、口元に手を当てたりして確認していた」。現在は、利用者が寝返りをうったのか起き上がったのかなどが一目で分かるため、「訪室の必要性を判断しやすく。結果として訪室回数が減り、利用者の睡眠の質も上がったと感じている」。 導入前に先行事例を見学。職員には機械に不慣れな人や外国人もいるため写真入りの手順書も手作りし「緊急時でも誰もが操作できるよう工夫した」。

手作りの手順書。操作方法や故障時の連絡先など、写真付きで一目で分かるようになっている

導入の際は、先行事例である那覇市の特別養護老人ホームおもと園を見学
「1人で逝かせない」
もう一つ目標に掲げるのが終末期の利用者を「1人で逝かせない」ことだ。同施設は医師や看護師が常駐し、看取りにも対応。以前は容体の急変などで家族が臨終に間に合わないケースもあった。「まだまだ勉強中だが、呼吸や心拍数を継続的に記録・分析できるようになったことで、終末期の急変を察知しやすく。遠方にいるご家族への連絡のタイミングも計りやすくなってきた」と笠原さん。家族からも「一緒に過ごせて良かった」「十分見送ることができた」と喜ばれているという。
「職員自身が負担軽減を実感できたことで、新しいことに挑戦する気持ちが出始めた」とも。「利用者が笑顔で過ごしている様子をご家族に届けたい」と職員発案でインスタグラムによる発信も始めている。笠原さんは「トライ&エラーを繰り返しながら、経験豊富な職員が長く働け、外国人も働きやすく、若い世代にもこの仕事に興味を持ってもらうのが目標。地域の方々が安心して年を取れる環境づくりにつなげたい」と話した。
2026年度の「業務改善研修&伴走支援プログラム」は7月から開始され、参加は無料。6月25日に説明会を兼ねた基礎セミナーが沖縄空手会館で開催される。詳細は「かいテク沖縄」へ。
取材/徳正美
毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」
第2111号(2026年6月19日発行)より転載