家族の未来守る 資産の見える化|どうするその空き家 あなたの実家も!?

全国空き家アドバイザー協議会沖縄県内の会員らが、空き家問題の背景や沖縄の現状を解説。今回は、2026年4月に発足した同協議会沖縄県沖縄支部の監事、山田晋さんが資産の見える化によって家族の未来を守る意義や沖縄支部の活動目標などを説明する。(文/山田晋 全国空き家アドバイザー協議会沖縄県沖縄支部監事)

4月に発足した沖縄支部の5月例会。組織態勢や地域の課題などを確認した=沖縄市

私は保険や財務の仕事を通して、多くのご家族や経営者の方々と向き合ってきました。その中で強く感じることがあります。空き家問題は、建物や不動産の問題だけではありません。本当は、家族の問題であり、未来の問題だ、ということです。

親が高齢になった。実家に誰も住まなくなった。相続人が複数いる。こうした話は決して珍しくありません。しかし、実際に話を伺うと、名義がどうなっているのか分からない。兄弟姉妹がどう考えているのか分からない。親御さん自身が何を望んでいるのかも分からない。そんなケースが少なくありません。

どう引き継ぐか まず現状を整理

私は、優先順位の一番は「資産の見える化」だと思っています。土地や建物、預貯金、保険、借入金、そして家族の思いも含めて見える化する。現状が見えるだけで、未来の選択肢は大きく変わります。

私は、経営者の財務相談にも携わっていますが、問題の多くは、お金がないことではなく、現状が整理されていないことから始まります。だからこそ、見える化は未来への第一歩なのです。

そして近年、空き家問題の背景には認知症という課題もあります。認知症が進行すると、不動産の売却や活用だけでなく、金融機関での手続きも難しくなる場合があります。

また、相続では、「何を相続するか」よりも「どう引き継ぐか」が大切です。土地や建物はある。しかし相続税を納めるための現金が不足している。その結果、思い出の詰まった家を手放さなければならない。そんなケースもあります。

金融資産は単なるお金ではありません。家族を守るための時間であり、選択肢であり、安心そのものです。

空き家になった家を見ていると、そこには誰かの人生があったのだろうと、考えさせられます。家族で囲んだ食卓。親戚が集まり、笑い声が響いた時間。子どもたちが走り回り、父や母、祖父母が見守っていた風景。何げない時間が、後になってかけがえのない思い出になる。家には、一つの家族の歴史が刻まれているのです。

空き家問題は、家族の物語をどう未来へつないでいくかという問題でもあるのです。

速い決断と行動 全体最適めざす

沖縄支部では、部分最適ではなく、全体最適を大切にしています。必要に応じて専門家が集まり、そのご家族にとって何が一番良いのかを一緒に考える。それが私たちの姿勢です。

沖縄支部の魅力は、行動の早さにもあります。大きな組織ではありません。しかし、大きくないからこそ動ける。顔が見える距離だからこそ決断が速い。相談があればまず動く。そんな仲間が集まっています。

最後にお願いがあります。親御さんが元気なうちに、家族で食卓を囲みながら、実家のことを話してほしいのです。

財産の話だけでなく、これからの暮らしのこと。家族のこと。思いのこと。「この家をどうしたい?」「何を残したい?」。そんな何げない会話が、いつか家族を救う日が来るかもしれません。

空き家問題とは、地域課題である前に家族の課題です。沖縄支部では、資産の見える化を進め、専門家同士が連携し、家族が話し合うきっかけをつくりながら、後悔を一つでも減らしていきたいと思っています。

家を守るためではありません。家族の未来を守るために。家を残すためではなく、その家で育まれた思いを残すために。相続財産を引き継ぐためではなく、家族の絆を引き継ぐために。

親が元気なうちに交わした会話が、いつか家族を支える力になる。シーミーや旧盆で家族が集まる機会の多い沖縄だからこそ、この機会に家族で話す時間を持ってほしいと思っています。

執筆者プロフィル

やまだ・しん/1966年生まれ、沖縄市在住。会社・家族・人生が止まらない仕組みを設計する会社、(株)エミシェア代表取締役。

お問い合わせ

全国空き家アドバイザー協議会 沖縄県沖縄支部
電話 098(989)0801


毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」どうするその空き家 あなたの実家も!?(28)  
第2113号(2026年7月3日発行)より転載