Bさん宅 RC造/自由設計/家族4人
閑静な環境で大勢で過ごせる家を思い描いたBさん一家。縦横に開放的なLDKは天井が北側の大開口に向かって上向きに延び、緑・青空へと視線が抜ける。南側は目隠しの植栽が日中の熱を遮りつつ、窓からこぼれ落ちる陽光を取り込む。

北側の大開口が印象的なLDKは北に向かって天井が上向きに傾き、天井高は高いところで約4メートル。南東に設けたL字のキッチンとの高低差で開放感をより演出し、両サイドから柔らかな日差しを取り込む
開放感×省エネ性
フランス出身のBさん一家は国内外を転々とし、6年前に夫人の故郷である沖縄に移住。借家で暮らしていたものの、「周囲の目を気にせずオープンに過ごせる住環境。そして、人が集まった時にはワイワイ過ごせる暮らし」を思い描き、建築雑誌で見つけた建築士に設計を依頼した。
農地を夫人の両親から分筆してもらい、転用・開発許可などの複雑な手続きを行い、昨秋にやっとマイホームが完成。家造りで夫妻が特に意識したのが「開放的な造り」と「高い省エネ性」だ。
生活の中心となるLDKは北側の大開口に向かって天井が上向きに延び、向かい合うようにソファやダイニングテーブルなどをまとめている。「ソファに腰かけたとき北側一面だけではなく、南側の窓からも木々や遠くの海、青空を見れる。外からの視線を気にせず、のんびり過ごしています」と夫人。掃き出し窓を開けると、隣接するファミリーテラスと一体的に空間を広く使うこともできる。

北側のファミリーテラスから見る室内。使いやすさとLDの広さを考慮して、キッチンは壁付けのL型をオーダー。家具、床・壁のタイルなどの色味はそろえ室内の統一感を出しつつ、自然光・暖色の照明が映えるようにした

LDKに隣接するファミリーテラスは深い軒が生み出す影と陽光の境界が際立つ。植栽のプランターは土留めを兼ねて、設計した
空間構成は登り坂の敷地に沿うように計画されている。最も高い東側からガレージ・玄関・ゲストルーム、LDK、居室・水回りを段々に配置。床の高さで公私のエリアを分け、家族が集まるLDKを必ず通る動線が特徴的だ。

北側外観は取り付け位置や大小さまざまの窓が散りばめられ、印象的だ
停電30時間にも耐え
Bさんは建築士と沖縄の気候風土に応じた「省エネ性」について議論を重ね、パッシブデザインと外断熱の組み合わせを採用。以前、暮らしていた借家では暖房を使うこともあったが、「暖房を使わずとも冬を快適に過ごせ、底冷えもなかった」と話す。
また、太陽光パネルや電気自動車から電気を供給できるシステムを整え、災害対策も徹底。「先月の台風6号では30時間ほど停電したが、断熱性能のおかげで快適に過ごせ、家電も何とか使い続けられた」と振り返る。
年に数回、フランスからBさんの家族が訪れ、家族時間を楽しむ。Bさんは「テラスを整え、外でも楽しく過ごせるようにしたい」と話した。
ここがポイント/南側に緩衝帯 遮熱性も加え
Bさん夫妻の要望の一つ「断熱性を含む高い省エネ性」から、設計を手がけたアトリエセグエの建築士・比嘉俊一さんは太陽の光や熱、風と自然力を生かす「パッシブデザイン」と「外断熱」を組み合わせた。太陽熱による蓄熱を考慮し、住宅の南西側に水回り、北側に寝室・子ども室などを配置。西日で水回りを乾燥させつつ居室に熱が伝わりづらい計画とした。その上で断熱材で住宅を覆う外断熱を採用し、「建築の形が意匠に限らず心地のいい住環境を整える装置も担う、沖縄の気候風土に合った住宅を提案しました」と比嘉さんは説明する。

南側外観。東側に向かって続く登り坂に合わせるように、建物のボリュームが抑えられている。建築士の比嘉さんは「地形に素直に従って、コストを抑え周辺環境に溶け込む外観デザインを提案しました」と話す
また、住宅南側には帯状の壁=下写真=を外壁とは別に設けたことで、厳しい日差しと熱が直接リビングに入りにくい計画とした。「内から外への視線の抜けとプライバシーを両立。帯状の壁と植栽帯を合わせてプランすることで、住宅の蓄熱だけではなく住宅周りから過ごしやすい環境を整えました」。勾配天井のLDKは大開口から北側の芝庭を見渡すことができ、「空に向かって伸びる軒先が視線を外へと誘導する」。

玄関まで続く玄関アプローチ。写真右側の外壁からせり出すように壁を設け、「窓上の庇(ひさし)を含めた躯体による遮熱、間の樹木を含めた植栽帯による地面からの反射熱を抑えている」と比嘉さん
空間構成は最も高い東側から①玄関+ゲストルーム、②LDK、③各居室+水回りと傾斜する地形に沿うよう計画。自然な動線で公私をゾーニングし、機能ごとにまとめた三つの空間を階段で緩やかにつなげ、「建具ではなく床高や床材などの仕上げで空間の変化を付けました」と比嘉さん。①~③の天井高も床高によって変化を付け、建物のボリュームを抑えた。「市街化調整区域に立つ住宅として適切な形状を模索し、圧迫感を与えないことも考慮しました」。

玄関と開放的なLDKをつなぐ階段

LDK(上)でくつろぐ家族と顔を合わせながら、写真右奥の階段を下り、各居室まで行くことができる

住宅南西側に配置された水回り。洗面脱衣室はトップライトから、奥の浴室は併設されたバスコートから柔らかな自然光を確保。西日の熱を利用し、湿気の影響を小さくしている

ランドリーには作業台や室内干しスペースを完備し、家事を効率的に行える造りとなっている
DATA
家族構成:夫婦、子ども2人
敷地面積:489.15平方メートル(147.96坪)
1階床面積:232.27平方メートル(70.26坪)
建ぺい率:47.48%(許容60%)
容積率:47.48%(許容200%)
構造:壁式鉄筋コンクリート造
用途地域:未指定地域
設計監理:(株)アトリエセグエ 比嘉俊一
構造設計:(株)黒岩構造設計事ム所
施工:(有)大繁建設
電気:喜友名電気
水道:(有)共同工業
キッチン:(有)MOV
お問い合わせ
(株)アトリエセグエ
電話 090(8406)8504
https://seguearchitects.jp
取材/市森知 撮影/比嘉秀明
毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」
第2113号(2026年7月3日発行)より転載