苦渋の決断 管理会社を変更|インスペクションで解明 住まいのミステリー

執筆者の下地鉄郎さんは先日、区分所有する築35年のマンションの大規模修繕を終えた。建物の専門家としてだけでなく、区分所有者、そして理事として経験したことをつづる。今回は管理組合で「管理会社を変える」という方針に至った経緯を説明する。(文/下地鉄郎 インスペクション沖縄メンバー、既存住宅状況調査技術者)

番外編「マンション大規模修繕を終えて 理事になり感じたこと②」

積立金不足分は借り入れ

管理会社に新たに作成してもらった長期修繕計画書をもとに、理事長と話し合い、次の三つの課題を主な議題とした臨時総会を開催した。

①修繕積立金の増額 
②どの工事を優先するかを整理 
③見積もりを依頼する施工会社をどう選ぶか。

修繕積立金の増額については、不安な反応をされる方もいたが、丁寧に説明することで理解していただいた。足りない分については、沖縄振興開発金融公庫の「マンション共用部分リフォーム融資」を活用する方針に落ち着いた。これは管理組合が共用部分の修繕費用を長期で借り入れられる制度で、積立金の増額幅をなるべく抑えながら工事費をまかなえる。ただ、増額幅を決めるためには、全体の工事額を把握しなければならない。最終的な増額の根拠を提示し、皆さんに納得してもらうためには、工事額の透明性が重要となった。

見積もりが不透明…

臨時総会後、全体の工事額を管理会社に概算してもらうこととなったが、ここで管理会社との考え方の違いが表面化した。理事長をはじめとする私たちは工事の透明性を確保するため、2社以上の施工会社の見積もりを依頼した。しかし、用意してもらった各見積書は、どれも管理会社のグループ会社のものであった。しかも、高額が予想されるエレベーター工事を含め、「一式」表示が多く、数量や単価が示されていない。その金額が高いのか妥当なのかを判断できず、積算根拠も明確でないため、不安が募った。各仕様についての質問への回答にも時間がかかる上、形式的な回答が多く、理事長とともに悩む日々であった。

管理会社の説明では、グループ会社の中で数社の見積もりを比較して出した工事額ということではあった。確かにグループ会社で固めると、責任の所在を一元化でき、品質管理やアフター面で安心、というメリットは理解できる。

それでも、何千万円単位(規模によっては億単位)となる工事である。根拠となる見積書の妥当性が不透明なことは、どうしても不安が残った。管理会社を信用していないわけではない。ただ、住民に説明する立場としては、比較の中身を開示してもらう必要があると考えた。しかし、実質的に開示は受け付けてもらえなかった。

他社見積もりが取れない

やむを得ず、理事長とともに見積もり依頼を受けてくれる会社を探すことにした。ところが、進めていくうちに分かったのは、マンションの大規模修繕工事には特有の請負構造があるということだった。

他社のマンション見積もり依頼に対して、施工会社やメーカーの反応はそろって慎重だったのだ。その理由としては、施工会社にとって、大手のマンション管理会社は継続的に仕事を回してくれる元請けのような存在であり、その関係を壊してまで一管理組合の相見積もりに応じる動機が薄い。また、管理会社に任せっきりのマンションも多く、管理組合から直接の見積もり依頼が少ないこともあり、作成に慎重になっていた可能性もある。結果として、他社見積もりが集まらない状況が続いた。

こうなると選択肢は、管理会社が提示した工事額で進めるか、管理会社との契約そのものを見直すのかに絞られた。最終的には、理事長が「マンション住民が施工会社の選定権を持てないことが、どうしても受け入れられない」と判断し、管理会社との契約解除の準備を進めることとなった。ただ、これは簡単なことではなかった。

管理会社変更の経緯(今回の事例)

執筆者プロフィル

しもじ・てつろう/1級建築士、(株)クロトン代表取締役。電話 098(877)9610


毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」インスペクションで解明 住まいのミステリー
第2111号(2026年6月19日発行)より転載