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2021年5月14日更新

[沖縄・建築探訪PartⅡ⑪]沖縄に思い寄せた構造家・渡辺邦夫| 那覇西給油所・ホテルタイラ|那覇市

次世代に残したい沖縄の建造物の歴史的価値や魅力について、建築士の福村俊治さんがつづります。

那覇西給油所・ホテルタイラ(那覇市)

沖縄に思い寄せた構造家・渡辺邦夫 
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[沖縄・建築探訪PartⅡ]台湾桃園国際空港と渡辺邦夫
台湾桃園国際空港。建築家・團紀彦と渡辺の協働。500万人想定の空港を3倍にに増やしたため外部を内部化する改修工事を手掛けた。カテナリー状鉄骨+PCルーバー型構造。2017年台南市コンベンションセンターコンペのため筆者と訪れた際の一枚。右が渡辺


[沖縄・建築探訪PartⅡ]東京国際フォーラム
東京国際フォーラム。建築家ラファエル・ヴィニオリと渡辺の協働。ガラス棟は鉄骨構造デザインの明るい大空間が広がる(写真/SDG)


建築構造家・渡辺邦夫が今年4月9日亡くなった。享年81歳。渡辺は沖縄に強い思いがあった。2015年9月に県立博物館美術館で県建築士会主催の講演会があり、翌年7月から1年間渡辺邦夫日曜学校・沖縄講座が開かれ多くの受講者が集まった。渡辺は国内では東京フォーラム、幕張メッセ、横浜大桟橋旅客ターミナルなど著名建築家との協働実績があり、中国・韓国・台湾など海外でも多くの作品がある。その世界的構造家が、病気の後遺症の残る体で遠い沖縄まで来て、12回の講義で構造デザインの話や経験を伝えた。



[沖縄・建築探訪PartⅡ]ホテルタイラ
ホテルタイラ。建築家・仲宗根宗誠と渡辺の協働。壁厚40センチのRC無梁版の構造デザイン。施工大城組


構造デザインこそ礎

渡辺は日大建築学科を1963年卒業後、建築家・前川國男の事務所と同じ建物内にある横山不学建築構造事務所に入所。日曜日、ひとりで仕事をしていると現れる前川先生の建築の話を聞くのが楽しみだったそうだ。64年木村俊彦構造事務所に移籍、69年からSDGを主宰し、多くの若手構造家を育てた。

昔、東京フォーラムの現場見学に行った初対面の私に「そもそも構造デザインとは」と熱く語った渡辺の姿が思い出深い。日曜学校の放課後、SDG出身で沖縄在住の中本克二さんや受講生と沖縄の構造の可能性を話した。沖縄では構造的デザインより意匠上の装飾的デザインが重視されることが多い。「構造デザインこそが新しい沖縄の建築をつくる礎で、みんなで議論しながら設計するコラボレーションこそが大切だ」との渡辺先生の教えを実践したいものだ。ご冥福を祈りたい。(敬称略)


[沖縄・建築探訪PartⅡ]那覇西給油所
那覇西給油所 建築家・仲宗根宗誠との協働。施工精度が高く塩害に強いPC構造デザインによって沖縄らしい半戸外空間が生まれた。

[沖縄・建築探訪PartⅡ]那覇西給油所 PC梁
柱から跳ね出したPC梁やルーバー部材から成る大きな屋根。

[沖縄・建築探訪PartⅡ]那覇西給油所 PC梁 柱 ルーバー
柱とPC梁とルーバーの納まり詳細。(写真/新建築)



[沖縄・建築探訪PartⅡ]福村俊治
ふくむら・しゅんじ
1953年、滋賀県生まれ。関西大学建築学科大学院修了後、原広司+アトリエファイ建築研究所に勤務。1990年空間計画VOYAGER、1997年teamDREAM設立。現在、浦添西海岸・キャンプキンザー跡地利用計画や里浜22、第32軍司令部壕を保存活用する会などでも活動中。
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1845号・2021年5月14日紙面から掲載

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