新旧調和の開放感|久友設計(株)[お住まい拝見]|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

お住まい拝見

お住まい拝見

2023年4月7日更新

新旧調和の開放感|久友設計(株)[お住まい拝見]

[古民家の風情になじむ平屋]
瓦ぶきの木造古民家が建つ敷地内に、平屋を新築したYさん(41)。リビングの大開口からは古民家と庭の緑が見え、ノスタルジックな風景を楽しみながら、開放的に暮らす。

白壁に木目を組み合わせ、シンプルにまとめたLDK|久友設計(株)[お住まい拝見]
白壁に木目を組み合わせ、シンプルにまとめたLDK。コーナーサッシを活用した大開口から光と風、隣接する古民家を景色として取り込む。リビングだけ天井高を上げて開放感を高めた


遊び、集い満喫

Yさん宅
 RC造/自由設計/家族6人 

金武町の古い住宅地に建つYさん宅。杉板模様のコンクリート打ち放しの塀と外壁が素朴な風合いを醸し、敷地奥にあるセメント瓦ぶきの古民家や庭の緑と調和する。

玄関を入ると、正面にあるガラス張りの中庭へと視線が抜け、明るく開放感がある。「中庭で水遊びをしたり、シャボン玉を飛ばしたり。子どもたちのちょうどいい遊び場です」と夫人。中庭を囲むようにLDKと個室、水回りが配置され、ぐるりと回遊できる造り。「窓を開けると家中風が抜けて、気持ちがいい。家のどこにいても中庭越しに様子が分かるので、小さい子も安心して遊ばせられます」

家族で集うことを重視したリビングは天井が高く、庭に面して2面の大きな窓があるため、一層広がりを感じる。窓際は畳スペース。窓の外には叔父が暮らす古民家も見えて、風情がある。「おじさんが子どもたちにお菓子やジュースを持ってきてくれたり、いい交流ができています」

畳スペースからLDK、中庭を見る|久友設計(株)[お住まい拝見]
畳スペースからLDK、中庭を見る。中庭をガラスで囲み、自然光をたっぷり取り込むだけでなく、向かいの水回りまで見えるようにしたことで、安心感と空間の広がりが生まれた

2列型にしたキッチンの奥には、デスクスペースもある|久友設計(株)[お住まい拝見]
2列型にしたキッチンの奥には、デスクスペースもある


使いやすさも抜群

将来仏壇を継ぐ予定の親の実家がある敷地で、家づくりを検討。敷地と実家の主である叔父と相談し、3棟あった古い住宅の1棟を取り壊して、新築することを決めた。

設計は知人に紹介してもらった建築士事務所に依頼。「建てたい家が漠然としていたけれど、建築士さんからの提案やアドバイスのおかげで、お気に入りの家ができた」とYさん。中庭からの採光、廊下を生かしてゆったり設けた洗面スペース、ガレージから直接、浴室へ向かえる動線は、「使いやすくて特に気に入っている」

家を建てた後に4人目も生まれ、家族は一層にぎやかに。Yさんは、「いとこたちを呼んで、庭でバーベーキューをすることも。親族が集まりやすくなってうれしい」と喜ぶ。

中庭裏手の廊下を利用した洗面スペース|久友設計(株)[お住まい拝見]
中庭裏手の廊下を利用した洗面スペース

 

​玄関ホール。正面にはガラスで囲まれた中庭、写真右手には吹き抜けがあり、明るく開放的|久友設計(株)[お住まい拝見]

玄関ホール。正面にはガラスで囲まれた中庭、写真右手には吹き抜けがあり、明るく開放的

 

ガレージから出入りできる物干し場|久友設計(株)[お住まい拝見]

ガレージから出入りできる物干し場。ここを抜けて脱衣室・浴室へ直行できる

 


ここがポイント
内外部で周囲との調和

敷地内の北側に木造の古民家があり、周辺には築年数のたったRC造住宅が多いYさん宅。建築士の大城彦樹さんは、古民家や周辺地域との関係性を重視。景観と調和し、程よい距離でプライバシーを守りながら、親族との交流も促すコートハウスを提案した。

住宅の横幅と高さは、南から北へ緩やかに上る前面道路の傾きと、古民家の屋根高を基準に決定。周辺の建物に溶け込むようにした。内部は、「家全体の採光と風通し、開放感を高めるため、中央に中庭(コート)を配置。中庭を囲むように玄関、LDK、個室、水回りを置くことで、公私を南北に分けました」と大城さん。

LDKは、叔父との交流とプライバシーを考慮して、庭を挟んで古民家と対面するように配置した。窓は、掃き出しとコーナーサッシを組み合わせた2面開口。窓際には畳スペースを設け、古民家のたたずまいを日常風景として取り込む。窓の外にはデッキがあり、必要な壁はデッキの外に設けることで、「ガラス越しに視線が外に抜け、室内がより広く感じられる。デッキは、親族との憩いの場にもなります」=写真参照

室内の開放感を高めるため、天井高も工夫。廊下やダイニング、キッチンは、天井高を2.2メートルに抑え、リビングだけは2.9メートルに。「高低差でメリハリをつけることで、吹き抜けでなくても開放的に感じられます」

外部は、外壁と塀の仕上げで調和を図った。塀は、杉板模様のコンクリート打ち放しに。古民家に近い外壁は、凹凸感のあるモルタル外壁塗装材、離れた南側は吹きつけタイルで仕上げた。自然素材のような素朴な風合いと、モダンな雰囲気を組み合わせることで、四角形の現代的な形でありながら、周囲と調和する建物になった。


リビングの一角に設けた畳スペース。窓の外にはデッキスペースがある|久友設計(株)[お住まい拝見]
リビングの一角に設けた畳スペース。窓の外にはデッキスペースがある。コーナーまでガラスにすることで視線が外へ抜け、空間に広がりをもたらす

隣接する古民家は、庭を挟んで畳スペースと対面する配置になっている|久友設計(株)[お住まい拝見]
隣接する古民家は、庭を挟んで畳スペースと対面する配置になっている

外観。住宅の高さ、横幅は、前面道路の傾斜と古民家の屋根高に合わせて計画|久友設計(株)[お住まい拝見]
外観。住宅の高さ、横幅は、前面道路の傾斜と古民家の屋根高に合わせて計画。外壁と塀の仕上げの変化で、周囲の景観となじませた



[DATA]
家族構成:夫婦、子ども4人
敷地面積:339.56平方メートル(102.71坪)
1階床面積:152.61平方メートル(46.16坪)
建ぺい率:49.16%(許容70%)
容積率:36.97%(許容400%)
用途地域:なし(都市計画区域外)
躯体構造:壁式鉄筋コンクリート造
設計:久友設計(株) 大城彦樹
構造:Lifetect
施工:(株)M’s
電気:(有)糸洲電気工事社
水道:(株)設備技研

問い合わせ
久友設計(株)
電話=098・974・4327
https://www.hisatomo-p.com/


撮影/矢嶋健吾 文・比嘉千賀子(ライター)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1944号・2023年4月7日紙面から掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
週刊タイムス住宅新聞編集部

これまでに書いた記事:2122

沖縄の住宅、建築、住まいのことを発信します。

TOPへ戻る