相続
2025年11月7日更新
空き家問題、官民の連携で柔軟迅速に対応 「空家等管理活用支援法人」とは 沖縄県内で指定例も|どうするその空き家⑳
文/山入端学(全国空き家アドバイザー協議会沖縄県名護支部事務局長)

文/山入端 学
(全国空き家アドバイザー協議会 沖縄県名護支部事務局長)
全国空き家アドバイザー協議会沖縄県名護支部の山入端学さんが、空き家問題の背景や沖縄の現状、具体的な活用方法を解説。今回は名護市から指定を受けた「空家等管理活用支援法人」について紹介する。
支援法人指定で
柔軟に迅速に
柔軟に迅速に
近年、空き家問題は多くの自治体や地域社会にとって深刻な課題となっています。人口減少や高齢化が進み、放置された空き家が増加し、防災・防犯・景観・衛生など多岐にわたる影響が生じています。
このため、国は「空家等対策の推進に関する特別措置法」を施行し、地域における空き家などの管理や活用を促進するための支援体制を強化、各市町村で官民連携の取り組みとして「空家等管理活用支援法人」の指定を推奨しています。
協議会名護支部
支援法人に指定
私たち全国空き家アドバイザー協議会沖縄県名護支部も県内2番目となる指定を名護市から受け、先日、交付式が行われました。
名護市の渡具知武豊市長(左から2人目)から「空家等管理活用支援法人」の指定書を受け取った全国空き家アドバイザー協議会沖縄県名護支部の屋部憲史朗支部長(同3人目)=名護市役所空家等管理活用支援法人とは、地方公共団体が空き家などの管理・活用を円滑に進めるため、一定の基準を満たした民間団体やNPO法人、公益法人などを指定する制度です。指定された法人は、自治体と連携し、空き家の適切な管理、利活用促進、所有者や地域住民への相談・助言、マッチング支援など多様な業務を担うことができます。
官民の連携によって、自治体の限られた人的・財政的資源を補完し、民間ならではの柔軟な発想や専門的ノウハウを地域課題の解決に生かすことができます。空家等管理活用支援法人が自治体と協力することで、以下の項目で連携が進みます。
①専門的な知識・技術を活用した空き家の調査・管理・利活用。
②所有者へのきめ細かな相談・ワンストップ支援体制の構築・解決までの伴走支援。
③地域住民や企業とのマッチングによる空き家活用の促進。
④行政手続きの円滑化と情報共有。
⑤地域コミュニティーの活性化や防災・防犯対策の強化。
経済や環境改善
多方面で活性へ
官民の連携で、地域にどのような効果がもたらされるでしょうか。
| 空家等管理活用支援法人がもたらす効果 |
| ●地域の景観・安全性の向上 ●空き家の有効活用による地域活性化 ●地域住民の負担軽減 ●移住・定住促進への貢献 ●空き家問題の早期発見・対応 ●行政負担の軽減と効率化 |
空き家が放置されると、老朽化や不法投棄、不審者の侵入など、地域の景観や安全性に悪影響を及ぼします。しかし、支援法人が定期的に管理することで、建物の劣化や環境悪化を防ぎ、美しい街並みと安心して暮らせる環境が維持されます。
支援法人は、空き家のリノベーションや利活用を促進し、地域のニーズに合わせた新たな用途(賃貸住宅、シェアオフィス、民泊施設、地域交流拠点など)へ転用することが可能です。空き家の有効活用で、地域内に新たな交流やビジネスチャンスが生まれ、経済活動が活性化します。
また、地域住民の負担軽減も期待されます。空き家所有者が遠方に住んでいる場合や高齢の場合、適切な管理が困難になります。支援法人が代行して管理することで、所有者や近隣住民の負担が軽減され、トラブル防止にもつながります。
移住・定住促進も進みます。リノベーションされた空き家は、移住希望者や若年層の新しい住まいとして提供されることが多く、人口減少が進む地域における定住促進の重要な資源となり、地域コミュニティーの維持・活性化にも寄与します。
支援法人が地域内の空き家情報を把握・管理することで、問題の早期発見と迅速な対応につながるでしょう。行政や地域住民との連携もスムーズに行われます。
さらに、行政だけでは対応が難しい問題に、支援法人が専門的な知見と経験を生かしてサポートすることで、行政の負担軽減と業務の効率化が期待できます。民間の柔軟な発想や迅速な対応力も生かされます。
空家等管理活用支援法人の活動は、単なる空き家相談にとどまらず、地域全体の安全・安心、経済活性化、住民の利便性向上など多岐にわたるメリットをもたらします。今後も地域社会との連携を深めながら、持続可能なまちづくりの一翼を担う存在として期待されています。

やまのは・まなぶ
1969年生まれ、名護市在住。昨年、(一社)全国空き家アドバイザー協議会沖縄県名護支部を設立し事務局長就任。(同)城コーポレーション代表社員。沖縄県宅地建物取引業協会会員。北部地区宅建業者会副会長
全国空き家アドバイザー協議会 沖縄県名護支部
電話=0980・43・1613
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2079号・2025年11月07日紙面から掲載
第2079号・2025年11月07日紙面から掲載




